白石ちえこ 写真展
白石ちえこ 写真展
「北北東」
北へ、北へ。そして東へ。
雪どけの北海道東部。
大地からにじみ出すような水の流れがあった。
広大な原野や湿原のすきまをぬうように、
けもの径と交錯しながら水際を巡った。
会期:2023年7月31日(月)- 8月12日(土)
日曜休廊
時間:12:00-19:00(最終日は17:00まで)
入場料:無料
会場:巷房 3F、地下1階、階段下(Link)
〒104-0061
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル 3F+B1F
Tel : 03-3567-8727
※新型コロナウイルスの情勢によっては上記の内容が予告なく変更の場合もございます、予め御了承くださいませ。
凍結した汽水湖を渡る鹿の群れに誘われ、2015年から真冬の道東に通った。
北の大地には野生的な自然が溢れていて、その大きな力に魅せられるように、二年ぶりに根室を軸に道東を旅した。
四月。根室に着いた翌朝には雪が降った。冬から春へ、なごりの雪。
川や湖の氷は溶けて、大きな水の流れが生まれていた。
大地から水がしみ出し、透明な空気の中で無数の小さな流れをつくり、土はうごめいていた。
森や草原で、かすかに草をかきわけ、踏み固められてできたけものたちの小径を見つけた。
まだ凍土がとけきらない頃には、森をくぐり、その小径をたどって湿原を抜け、水辺までたどりつけた。
根室の語源はアイヌ語の「ニムオロ」、樹木の繁茂するところの意味だという。
かつてこの地はシマフクロウが巣をつくれるほどの大きなうろを持つ樹々が生い茂る、深い森だったのだろう。
いまは大きな樹は見当たらないし森も減ったが、昔から変わらず人を寄せつけない広大な湿原は残っている。
歴史の中で大地の開拓や開発が進み、人の手が入り込んできてはいるものの、道東の湿原には力強い自然の風景があった。
大きな自然の中に人が入り、交わり暮らす。この北の大地には、人間が自然環境と交差しだした、はじまりの風景のようなものを感じるのだった。
ここでは動物も人も同じように、自然の中にぽつりぽつりと姿を見せた。
一見何も無いような風景に見えるが、そこに惹かれてまた道東を訪ねてしまうのだった。
「ここへ畑起こしてもいいかあ。」
「いいぞお。」森が一斉にこたえました。
みんなは又叫びました。
「ここに家建ててもいいかあ。」
「ようし。」森は一ぺんにこたえました。
(『狼森と笊森、盗森』宮沢賢治 )
土地にまだ名前のなかった頃。
道東を旅していると、どこからか風にのって、こんな声が聴こえてくるのだった。
白石 ちえこ
撮影 2022年4月〜2023年3月
白石ちえこプロフィール
神奈川県横須賀市生まれ
アジアを巡る旅の中で写真を撮りはじめ、1995年に町主催の「モノクロ写真引き伸し講座」を受講。
2000年頃より写真作品の制作をはじめる。
【個 展】
1998年 「とおいまち」 ガレリアQ・東京新宿
2003年 「サボテンとしっぽ」 巷房・東京銀座
2005年 「ロバのいた町」 Roonee 247 photography・東京四谷
2006年 「アマリリス通り」 ギャラリー冬青・東京中野
2007年 「猫目散歩」 ギャラリー街道・東京阿佐ヶ谷
2008年 「サボテンとしっぽ 写真集刊行記念展」 ギャラリー冬青・東京中野
2010年 「ねこと海」 喫茶 谷中ボッサ・東京谷中
2011年 「 海に沈んだ町 刊行記念展」 蒼穹舍・東京新宿
2012年 「ペンギン島の日々 – いつか見た風景 – 」ART SPACE 繭・東京京橋
2014年 「ホエールウォッチング」 gallery & café Hasu no hana・東京鵜の木
2015年 「島影 SHIMAKAGE 写真集刊行記念展」 森岡書店・東京茅場町、
Gallery722・岡山吉井、 toki分室・東京西荻
2016年 「島影 SHIMAKAGE」 mind’s eye gallery Adrian Bondy・Paris France
2017年 「鹿渡り SHIKAWATARI」art space 繭・東京京橋
2019年 「ムジナムジカ」 トーチカ 古書流浪堂・東京目黒
「鹿渡り SHIKAWATARI」 mind’s eye gallery Adrian Bondy・Paris France
「島影 SHIMAKAGE」 Kokonton Gallery・Venezia Italy
2020ー2021年 「島影 SHIMAKAGE」 READAN DEAT・広島
「鹿渡り SHIKAWATARI 写真集刊行記念展」 巷房・東京銀座、
ギャラリーソラリス・大阪心斎橋、ギャラリー楽風・埼玉浦和、1231店・岩手水沢、
ON READING・愛知名古屋、Unseen Amsterdam (Galerie Écho 119、Paris)
・Amsterdam Nederland
「旅と風光」トーチカ 古書流浪堂・東京目黒
2022年「À la Frontière des Songes」 Galerie Écho 119・Paris France
「町の光景、島の風景 白石ちえこ 1998−2021」 G&S根雨・大阪豊中
「銀の影」 ギャラリーユニコ・東京千代田区二番町
2023年 「島影 SHIMAKAGE」Gallery Negative・釜山 韓国
【その他 】
2004年 「ホンニコノ国ヨイ国ヂャ 関口国雄+白石ちえこ 二人展」 ナノリウム・山梨富士吉田
2005 / 2008 / 2009年 「まちがミュージアム!」 西裏界隈・山梨富士吉田
2010年 「足利風景 —旅の視線、地の視線—」 足利市立美術館・栃木足利
2011年 「会津・漆の芸術祭 〜東北へのエール〜 」 大和川酒造・福島喜多方
2013−2014年 「MONOCHROME LANDSCAPE 色のない景色」
Art Labo 深川いっぷく・東京白河、Flowmotion・北海道帯広
2015年 「ペンギンの行方〜写真の辺境、版画の辺境 猫野ぺすか・白石ちえこ二人展」
Art Labo 北舟・北海道帯広
2016年 「Tbilisi Photo Festival 2016 〝Contemporary Japanese Photography〟」
MOMA・Tbilisi Georgia
「ピーターミラー・白石ちえこ 二人展」砂丘館・新潟絵屋(二会場同時開催)・新潟
2018年 「雪の結晶 鹿渡り 田中雅樹 × 白石ちえこ 二人展」 ナノリウム・山梨富士吉田
2019年 「Snapshot 瞬間はいつも輝いている」ギャラリーA.W.P
リコーイメージングスクエア銀座・東京銀座
2021年 「写真の町 東川町写真賞受賞作家展」東川町文化ギャラリー・北海道
2023年 「Past Winners 写真の町 東川町歴代受賞作家屋外写真展
Northern Life ー 北のくらし、北へのまなざし ー 」 東川町内各所
【写真集 】
2008年 「サボテンとしっぽ 」 冬青社
2015年 「島影 SHIMAKAGE」蒼穹舎
2019年 「鹿渡り Shikawatari」私家版 限定100部
2020年 「鹿渡り SHIKAWATARI」蒼穹舎
【共 著 】
2011年 「海に沈んだ町」(小説・三崎亜記) 朝日新聞出版
【受 賞】
2021年 第37回 写真の町 東川賞 特別作家賞
【収 蔵 】
清里フォトアートミュージアム・足利市立美術館・北海道東川町文化ギャラリー
企画:アトリエ シャテーニュ