2017-09-13

第2回 便利堂コロタイプアカデミー・参加レポート

8月下旬の土日、京都の便利堂さん主催の「コロタイプアカデミー」に参加してきました。

コロタイプとは何か;

コロタイプは1854に発明され1873年に実用化された印刷技術です。網点を入れるオフセットやドットで表現するインクジェットとは違い、大判のネガフィルムを原版としてゼラチンの版に直接焼き付けるため、ドットがない自然な階調表現になります。

詳しくは少し古い映像ですが、こちらをご覧ください。またこんな試みもしています。

便利堂コロタイプアカデミーとは

便利堂ではこの希少な技術を多くの方に体験して理解を深めてもらう為に、初心者向けの体験コースから5日間のより深いレベルを体験できるコースを用意して、しかも山本修氏という超ベテラン・コロタイププリンターが付きっきりで指導してくれるという、贅沢なワークショップです。私は2日間のコースを受講しました。

 

 

講師の山本修氏

 

作業に入る前にコロタイプについてのレクチャー、そして実際の印刷に使う機械でデモンストレーションを見せてもらいます。この時に、今日使うインクも練り込みます。

サーバーの関係で細切れ映像ですが、山本さんの流れるような動きをご覧ください。

 

 

 

 

 

版について

今回非常に興味深かったのは、版です。上記の動画でもわかるように、実際のコロタイプでは感光性を持たせたゼラチンを厚いガラス板に塗布して使うのですが、これはまさに職人芸で素人には真似できません。また感光性を持たせる為の薬品は下水に流せず、専門の廃液業者が処理しなければなりません。

では、どうするのか?ここが肝で、体にも環境にも優しい感光乳剤を使用した「コロタイプティッシュ」という便利堂が改良した版を使います。このティッシュの作り方も教えてもらえますが、なるほど!目からうろこの落ちる思いでした。何がって、ゼラチンはゼラチンでもフィルムのゼラチンを利用するのです。フィルムのベースとゼラチンを使うので、期限切れのフィルムでOK。フィルムのバックコートを水で洗い流せば先ずはゼラチンのあるベースが完成。次にそのゼラチンに感光液を染み込ませ乾燥すればできあがり。これはすごいイデアです。ベースがガラスかフィルムかの違いだけです。(感光液の成分はもちろん違いますが)

フィルムに画像を焼き付けた版

刷りの準備

さて出来上がった感光フィルムに、ネガを重ねて紫外線で露光、現像、水洗、乾燥すれば版は完成。ゼラチンは紫外線が多く当たった部分ほど固くなります。版に水をまんべんなく塗布し、しばらく置いておくと感光されていない部分(ハイライト)はゼラチンが柔らかいので水を含んで膨潤し、感光された部分(シャドー)はハイライト部分が膨潤する分深い凹となってインクが多く入ることになります。手で触るとうっすらと凸凹がわかる程度。次にグリセリンを薄めたものを同じように塗布して、最後に吸い取り紙のローラーで水を拭き取ります。

インキはこんな感じ。ここからもうひと練りします

見にくいですが、左上にあるのが手動式の印刷機。

職人さん手作りの水を吸い取るローラー。わら半紙を幾重にも巻いて作ってあります。

 

刷り

いよいよ刷りになります。インキはある程度山本氏が練ってくれますが、後は自分で練ります。これが難しい!そしてそのインキをガラス板の上に薄くのばし、そのインキをローラーに付けていきます。インキを薄くローラーに付けて、そのローラーで版にインキを載せます。この加減でコントラストや濃度が微妙に変わっていきます。私は刷りより、このインキのつけ具合の方にこの技法の醍醐味を感じました。

 

仕上がり

インキの付け方でコントラストやディティールの有無を変えられるので、面白くて何枚も刷ってしまいます。ある程度まで刷るとゼラチンが硬化してくるので、また水を付けて洗い再使用できます。

コントラストを変えてプリントしてみました。

今回コロタイプを経験して印刷という最終処理まで自分でできることがわかり、製本まですれば撮影からフィニッシュまですべて自分の手で完結させたクオリティーの高い写真集ができます。少部数の写真集には最高の選択ではないかと思いました。

 

アトリエシャテーニュ・オルタナティブ・スタジオ 猪股

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